悪人

＜＜ストーリー＞＞若い女性保険外交員の殺人事件。ある金持ちの大学生に疑いがかけられるが、捜査を進めるうちに土木作業員、清水祐一（妻夫木聡）が真犯人として浮上してくる。しかし、祐一はたまたま出会った光代（深津絵里）を車に乗せ、警察の目から逃れるように転々とする。そして、次第に二人は強く惹（ひ）かれ合うようになり……。（シネマトゥデイ）

初めてこの映画の予告編を観たのは「告白」の上映の時だった。（多分）
芝居達者の方々に紛れて妻夫木聰さんは大丈夫なのかとは思っていたが、
アイドル俳優っぽかった彼はここ数年バイプレイヤーとしてもしっかり腕を磨いたのか、
他の俳優に引け目を取らないしっかりとした演技ですごく良かった。
若手の満島ひかりさんや岡田将生さんも今時っぽい勢いで怖さが増幅。
配役の妙というべきか素晴らしく皆ハマり役だった。

「誰が本当の"悪人"なのか？」
非常に最後まで考えさせられた。誰が悪人なのかと。
観終わってからも心に残るドスンとした衝撃。嬉しくもあり悲しくもある。
昔々東京でとある娘の通う幼稚園で母親が娘の同級生を殺めた事件があった。
母親は幼稚園の娘と同じクラスの母親グループからつまはじきにされ、
娘もその母親グループの娘や息子たちから毎日いじめを受け続けて、
耐え兼ねて母親グループのリーダーに対する復讐だった。
もちろん人を殺めることは犯罪だし悪ではある。
でもその事件が起きた時、僕は犯人が100％悪いとは思えなかった。
世論では母親が相談する友人がいなかったとか転園させればいいとか言われてたが、
子供に対する自分に対する屈辱は一生消えなかったかもしれない。
結果的にはその娘が一番かわいそうだとしか僕には思えなかったのだが…。

ここ数年被害者家族と加害者家族とか加害者の気持ちなどを描いた映画などが増えた。
もちろん加害者が道徳的にも社会的にも悪いのかもしれないが、
ここでも被害者が本当にかわいそう～とは全く思えなかった。
でも多くの映画やドラマで加害者擁護の傾向がかなりあるのはちょっとおかしいのかも。
この映画では犯人は『孤独』であり祐一は現代社会から選ばれた『孤独』の化身かもしれない。

増尾圭吾は何の罪にも問われないのも合点がいかないが、
とにかく人間の『孤独』が何度も心にしみてウルウルくる素晴らしい映画だった。

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